一般の病院にはない、大学医学部附属病院の大きな特色は研究です。
研究は大きく臨床研究と基礎研究に分けて話すことができます。
臨床研究は今まさに目の前におられる患者さんに最新で最善の医療を行うことを目指しています。この目標のため当科では、各種の治験への参加や当院倫理審査会の承認を受けた世界基準の治療を行っています。
また、従来の治療法に限界を感じたとき、これを打破することができるのは基礎研究しかありません。世界的にスタンダードな教科書、up-to-dateな論文を読むことは大変重要なことです。
しかしながら、大学で働く大学人はそのような教科書や論文を読む受信者だけではなく、それを送り出す発信者になることができるのです。
もちろん基礎研究はすぐに結果が出ることは少なく、目の前の病める人には間に合わないかもしれません。
しかし、蒔かれた種はやがて芽を出し、太い幹となり大きな葉をはり、必ず将来の目で悩める多くの患者さんを治すことに繋がります。基礎研究では実験に専門的な知識や手技を必要とすることも多く、従来とは別の視点や研究から新たな突破口が見つかることもあるため、現在は当教室では当大学大学院の循環病態学講座の協力を得ながら眼内血管新生やぶどう膜炎などの眼疾患に関わる研究を行っています。
ぜひ当科に入局してぜひ将来の日本の眼科を担っていきましょう。
オプトアウト
現在、信州大学 眼科学教室では様々な臨床研究を行っています。臨床研究のうち、研究にご協力いただく方に直接ご説明や同意をいただく手続きが必要ないものについて、下記のリンクに随時追加されますのでご参照ください。
代表的な現在進行中の研究内容は以下になります。
- 広角光干渉断層計(OCT-S1 Canon)を用いた網膜硝子体界面の解析
- 網膜静脈閉塞症黄斑浮腫に対する血管内皮成長因子阻害薬注射回数と治療後視力の予測因子の検討
- 25ゲージ硝子体手術の予後因子に関する後ろ向き研究
- 緑内障手術の予後因子に関する後向き研究
- 前眼部光干渉断層計(CASIA2)を用いた前眼部所見の解析
- 全身性アミロイドーシスに伴う眼所見と眼合併症治療成績の検討
- 緑内障患者の使用薬剤に関する検討
- 眼科外来における視覚障害の方へのサポート状況の調査
基礎研究
当科は、循環病態学講座の新藤隆行教授 の指導を仰ぎながら、様々な遺伝子改変マウス・モデル動物・培養細胞を用いて、眼疾患に関わる遺伝子の病態生理学的意義を検討し、将来の眼疾患の治療につながる基礎研究を継続して行っています。
当科の村田教授は血管内皮増殖因子(VEGF)が糖尿病黄斑浮腫に重要な働きをしていることを解明した網膜硝子体疾患のスペシャリストです。現在では、抗VEGF薬が糖尿病黄斑浮腫・加齢黄斑変性などの疾患に臨床応用され、以前は治療法のなかった疾患をもつ患者さん方に希望の光を照らしています。しかしながら、抗VEGF薬を続けていると疾患が再燃してしまう症例も少なくありません。村田教授の流れを汲み、当科では主に網膜硝子体疾患の病態と新規治療法について基礎研究を行っています。これまでに、アドレノメデュリンなどの血管作動性物質とその受容体システムが、糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜静脈閉塞症・未熟児網膜症などの失明につながる眼疾患に対する治療標的として期待されるということを報告してきました。
それらの研究結果は、非常に高く評価され、今まで日本眼科学会学術奨励賞・松医会賞、⽇本眼科学会総会学術展⽰優秀賞、ARVO foundation travel grantなどを受賞しています。
関連論文
- Tanaka M, Kakihara S, Hirabayashi K, Imai A, Toriyama Y, Iesato Y, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Tanaka M, Cui N, Wei Y, Zhao Y, Aruga K, Yamauchi A, Murata T, Shindo T. Adrenomedullin-Receptor Activity-Modifying Protein 2 System Ameliorates Subretinal Fibrosis by Suppressing Epithelial-Mesenchymal Transition in Age-Related Macular Degeneration. Am J Pathol. 2021 Apr;191(4):652-668. doi: 10.1016/j.ajpath.2020.12.012. Epub 2020 Dec 29. PMID:33385343.
-
Hirabayashi K, Kakihara S, Tanaka M, Shindo T, Murata T. Investigation of the therapeutic mechanism of subthreshold micropulse laser irradiation in retina.
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2020 May;258(5):1039-1047. doi: 10.1007/s00417-020-04638-3. Epub 2020 Mar 5. PMID: 32140926. - Hirabayashi K, Tanaka M, Imai A, Toriyama Y, Iesato Y, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Tanaka M, Dai K, Cui N, Wei Y, Nakamura K, Iida S, Matsui S, Yamauchi A, Murata T, Shindo T. Development of a Novel Model of Central Retinal Vascular Occlusion and the Therapeutic Potential of the Adrenomedullin-Receptor Activity-Modifying Protein 2 System. Am J Pathol. 2019 Feb;189(2):449-466. doi: 10.1016/j.ajpath.2018.10.021. Epub 2019 Jan 15. PMID: 30658846.
- Imai A, Toriyama Y, Iesato Y, Hirabayashi K, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Tanaka M, Liu T, Xian X, Zhai L, Dai K, Tanimura K, Liu T, Cui N, Yamauchi A, Murata T, Shindo T. Adrenomedullin Suppresses Vascular Endothelial Growth Factor-Induced Vascular Hyperpermeability and Inflammation in Retinopathy. Am J Pathol. 2017 May;187(5):999-1015. doi: 10.1016/j.ajpath.2017.01.014. Epub 2017 Mar 17. PMID: 28322199.
- Iesato Y, Yuda K, Chong KT, Tan X, Murata T, Shindo T, Yanagi Y. Adrenomedullin: A potential therapeutic target for retinochoroidal disease. Prog Retin Eye Res. 2016 May;52:112-29. doi: 10.1016/j.preteyeres.2016.01.001. Epub 2016 Jan 12. PMID: 26791747.
- Toriyama Y, Iesato Y, Imai A, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Yamauchi A, Igarashi K, Tanaka M, Liu T, Xian X, Zhai L, Owa S, Murata T, Shindo T. Pathophysiological function of endogenous calcitonin gene-related peptide in ocular vascular diseases. Am J Pathol. 2015 Jun;185(6):1783-94. doi: 10.1016/j.ajpath.2015.02.017. Epub 2015 Apr 7. PMID: 25857228.
- Iesato Y, Toriyama Y, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Yoshizawa T, Koyama T, Uetake R, Yang L, Yamauchi A, Tanaka M, Igarashi K, Murata T, Shindo T. Adrenomedullin-RAMP2 system is crucially involved in retinal angiogenesis. Am J Pathol. 2013 Jun;182(6):2380-90. doi: 10.1016/j.ajpath.2013.02.015. Epub 2013 Apr 4. PMID: 23562442.
- Ichikawa-Shindo Y, Sakurai T, Kamiyoshi A, Kawate H, Iinuma N, Yoshizawa T, Koyama T, Fukuchi J, Iimuro S, Moriyama N, Kawakami H, Murata T, Kangawa K, Nagai R, Shindo T. The GPCR modulator protein RAMP2 is essential for angiogenesis and vascular integrity. J Clin Invest. 2008 Jan;118(1):29-39. doi: 10.1172/JCI33022. PMID: 18097473; PMCID: PMC2147670.
臨床研究(1)
治験・臨床研究 本気でやっています!
治験・臨床研究は、新しい医療の開発や医療の進歩のために行われますが、その実施にあたり、スタッフには大変な時間と労力が必要となります。
当科では、日頃から臨床研究支援センター と協力して、治験・臨床研究に意欲的に取り組んでいます。
村田教授が中心となり、多施設で行ったZIPANGU trialなどエビデンスレベルの高い臨床研究を行った実績があります。
臨床研究(2)
眼科は光干渉断層計(OCT)、光干渉断層血管撮影(OCTA)、眼底写真などの画像を簡便に撮影できるので、臨床研究がしやすい科です。日常診療で行った検査結果を用いた画像解析、手術や抗VEGF療法の治療成績、検査結果と治療予後の相関など様々な臨床研究を行っています。
最近では、村田教授が専門にしている網膜硝子体疾患(糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症・加齢黄斑変性など)の画像解析や、長野県に患者さんが集積している家族性アミロイドポリニューロパチーの眼所見、緑内障手術の治療成績などの臨床研究結果を、学会・英文雑誌で発表しています。