-
2022.06.20
【留学体験記】東京歯科大学市川総合病院 笠松広嗣先生
笠松先生が東京歯科大学市川総合病院へ国内留学をされて1年が経ちました。
コロナ禍での留学のため私たちも彼と会う機械に恵まれず、留学中の貴重な経験を聞くことができていません。そこで、東京歯科大学での仕事や生活について留学体験記に記して頂きました。
臨床、研究ともに熱心で、医局のムードメーカーでもある笠松先生が、長野県に戻って来られるのが今から楽しみになる内容です。是非ご一読下さい。
(留学体験記)笠松弘嗣先生
長野県の皆様、お久しぶりです。この度、留学体験記の依頼があったため、投稿したいと思います。
◆自己紹介
平成27年度信州大学卒、平成29年度に信州大学に入局し、長野日赤を経て昨年度から東京歯科大学市川総合病院に角膜移植を勉強しに二児(2歳、5歳)を連れて国内留学をさせていただいております。(先日妻が懐妊したので、三児の父になります。)
◆東京歯科大学市川総合病院について
東京歯科大学(以下TDC)・・・聞いたことのない方もいると思います。(私自身も平野先生から留学のお話をいただいた時は東京医科歯科大学と勘違いしていました。)
TDCは東京ディズニーランド(TDL)と同様、千葉県にあります。教授の島﨑潤先生を始め、角膜疾患のエキスパートが集まっています。併設されているアイバンクや病院の全面的な協力もあり、国内最多の年間約200件の角膜移植を施行しております。規模としては市中病院に近いのでオペのハードルが低く、オペを依頼したら、すぐに対応してくださるので働きやすいです。(国内ドナー角膜は突然提供がある上、使用期限もあるのでオペ室のフットワークの軽さは大事です。)慶應系列の病院なので慶應の先生が多いですが、私のような角膜フェローも全国からやってきます。色々な大学との交流があるせいか、非常にアットホームな雰囲気で楽しいです。コロナ前は毎月のように飲み会があったようなのですが、今は全くなく少し寂しいです。(私の酒癖の悪さは平野先生はじめ信州大学の皆様ご存じのものと思いますので、幸いかも知れませんが)
◆仕事・研修内容について
病棟管理や日々の外来のシステムは基本的には信州大学と同じです。
病棟管理は自分が手術をした、もしくは助手に入った方の診察をします。
月・金が私の外来日としていただいております。歴代のフェローから受け継いだ患者さんや他県から難治性としてはるばるやってくる患者さんなど、大変な症例も多いですが、上級医の先生に相談しやすい環境ですので、有難く診察させていただき日々とても勉強になっております。
白内障、翼状片の手術は外来でご紹介いただいた方の手術を予定して、下の先生についてもらい手術をすることが多いです。(もちろん難治性の場合は上級医についていただくことも可能です。)
角膜の手術ですが、海外ドナーは上級医の先生の助手について、勉強しています。国内ドナーが出た場合は、上級医の先生に助手について、フェローの誰かが手術をする形です。コロナ禍で角膜の提供が減っていることもあり、例年に比べると出番が少ないですが、最近は海外ドナーでの角膜移植もさせていただけており、残り一年間で症例数を伸ばしていく予定です。
学会報告や論文、研究は、上級医の先生にネタを頼めば、いくらでもいただけます。論文は英語論文で書く事が基本です(当たり前?)ので、英語が苦手な私にとっては少々大変ですが、DeepLを駆使してなんとか書いております。
教科書の執筆も上級医の先生に依頼が来たものをやらせていただいております(油断すると溜まってしまうので、隙間時間に執筆しております)ので、学術的にも忙しい日々を送っております。
◆留学の成果
角膜移植の基礎を学びました。(合併症の対策や、難症例への対処などまだまだ勉強・経験すべきことが山積みで、一人でやる自信は残念ながらまだないですが、あと1年間でなんとかなるよう頑張ります。)
角膜移植後の管理を学びました。角膜移植は長期にステロイドを使用しますし、拒絶反応や感染、緑内障と隣り合わせで、白内障などの『やって終わり』といった手術とは少し毛色が違い、一生付き合っていかなければいけない手術ですので、かなり重要です。こちらもまだまだ学ことが山積みですのであと一年頑張っていきます。
前眼部の診察・診断技術を学びました。上級医の先生とは、診断能力は月とすっぽん位違いますが、研修前よりはずいぶん自信をもって診断・治療ができる症例が増えました。こちらも課題が山積みですが、あと一年間少しでも上級医の先生に近づけるように頑張っていきます。
研究の基礎を学びました。統計を使用した研究などもやらせていただき、統計の面白さ、英語論文の大変さやリサーチマインドを持つことの重要性など、現在進行形で学んでおります。
◆余暇について
東京に出やすい立地なので、家族で東京に出て食事をしたり、コロナが収束してきた隙をついてテーマパークに行ったりしています。遊ぶ場所が色々あって都会は楽しいですが、公園などは小さく、子連れの身としては長野を恋しく思うこともあります。
◆コロナ禍での留学についての雑感
手術や臨床・研究はもちろんのこと、今後の医師としての在り方の礎となる考え方など
様々なものを勉強させていただいております。同期の北原先生を始め、信大の私の前後の学年の先生は非常に優秀な先生が多く、私などが留学させていただいてよかったものか自問自答の毎日ですが、自分なりに精一杯頑張っております。
留学して1年が経過しました。色々な先生と出会えたこと、知らない分野を勉強することで大変なことや楽しかったこともありますが、全体としてはとても満足した研修を送らせていただいております。あと、1年間短かったです(笑)。
最後になりますが、留学のために尽力してくださった村田教授・平野先生、留学についてきてくれた妻と子供にこの場をお借りして深く感謝申し上げます。